このブログを検索

2014年7月9日水曜日

「焼身自殺にピンとこない、じゅんびばっちりな自分に驚いた」

7年前に詩人の宮尾節子さんが書いた詩「明日戦争がはじまる」を転載して、こう(タイトルのように)ツイッターでつぶやいた人がいるという。先日触れた「新宿駅前で集団的自衛権行使容認に反対する演説をしていた男性が焼身自殺を図り重傷を負った」出来事についてのつぶやきだ。これをきっかけに、宮尾さんの詩がネット上でどんどんひろがったということだ。その詩とは−

明日戦争がはじまる

まいにち
満員電車に乗って
人を人とも
思わなくなった

インターネットの
掲示板のカキコミで
心を心とも
思わなくなった

虐待死や
自殺のひんぱつに
命を命と
思わなくなった

じゅんび

ばっちりだ

戦争を戦争と
思わなくなるために
いよいよ
明日戦争がはじまる

この詩は書かれた当時連日のように流れていた自殺や虐待死のニュースに心を痛めてつくられたものだという。「戦争」ということばは不穏な空気への不安から出てきたものだということだが、いまやそれが現実味を帯びている。

いまだにそう思っていない人も多いだろう。が、どんな社会においても、一部の人間を除く大半の人は、戦争が起きるまで、その気配が自分で感じられるようになるまで、戦争の姿をイメージできずに生きていたというのが、ほんとうだろう。

焼身自殺のニュースの際も、その事実を最小限伝える記事は各メディアで掲載されたが、「驚いた」という目撃者の反応以外に、詳しい事情やその場にいた人々の思いに触れる記事はみていない。その事実の裏にはほんとうに「じゅんびばっちりな日本人」が無数にいる気がしてならない。

話は変わるが、メキシコでは麻薬カルテルが生首を路上に放置したり、死体を歩道橋からつるしたりする事件が頻発し、そんな写真が1面を飾るタブロイド紙が毎日のように街角に並ぶ町もある。ネットに流れているおびただしい数のこの手の写真をみた日本人は、とんでもない国だと怖れおののく。が、ある意味これも、すでに戦争状態にある社会と、「明日戦争がはじまる」とうたわれる社会の、命の軽さのちょっとした差でしかないのかもしれない・・・ そのくらいの危機感が今、私たちには必要だ。



0 件のコメント:

コメントを投稿