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2016年2月21日日曜日

雇用なしで生きる

昨年6月にスペインの地方選挙の話を書いて以来、放りっぱなしになっていたブログ。いかんいかんと思い、そのスペイン話で復活させることに。

まさにそのとき書いたことに関係する本が、3日前に無事発刊となった。4年前の2011年5月15日起きた市民運動15M を追い始めてから、取材を重ねてきたテーマをまとめたものだ。タイトルは「雇用なしで生きる」。今や良き友人となったスペインのフリオ・ヒスベールさんが書いた本からいただいたタイトルだ。それはある意味、象徴的なタイトルで、要は既存の経済、社会、政治のあり方を見直し、生き方そのものを変えようというメッセージを込めたものだ。

政治、経済、社会の変革。それは今、この日本でも真剣に議論される必要性に迫られていること。だが、多くの場合、どれかに偏り、実際の行動はひとつのことにのみ限定されがちな気がする。それをつなげて考え、行動しているのが、スペインで政治運動や社会的連帯経済に関わる市民だ。そのネットワーク力を、ぜひ私たちも学びたいと思い、この本を書いた。

私自身は大学を出てからずっと、雇用なし、のフリーランスだが、それがかなり特殊に見られるうえ、やっていくのに苦労する社会が、日本だ。なぜそうなるのかを考えれば、おのずとこの社会が抱える不自由さ、管理主義、過剰なまでの企業信奉による資本主義支配の奇妙さに気づく。働くことに喜びを見い出すことがむずかしい社会、「喜びを見いだしているよ」と言う人も実は「働くこと」ではなく、「それで得られるお金や地位」に喜びを見い出しているのではないかと疑いたくなることも多い。いわゆるお金や、いわゆる地位につながらない労働をする者は、価値がないかのようだ。

その矛盾に気づくことが、これからの日本の未来を、世界の未来を明るくする。
余談だが、さきほどテレビ「日曜美術館」で、蓑虫山人という放浪の画家の話をみて、まさに「雇用なしで生きる」の理想のような人だなぁ、とうなった。全国各地で野宿をしたり、ひとに世話になったりしながら、絵を描く旅をする。宿や食事の礼に絵を置いて行く。そう、お金も地位も目的じゃない仕事(活動?)で自由かつ幸せに生きる。なんとすばらしいことか!それが受け入れられる社会が、150年ほどまえはここにもあった。