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2021年1月7日木曜日

パンデミック下のメキシコで 1)露店商

 メキシコシティは、12月半ばから、「赤信号」。食料品店やスーパーなどの必要不可欠な事業以外は、皆、休業となり、飲食店もテイクアウトとデリバリーのみとなった。お昼時に外出している場合は、コンビニやファストフード店、屋台などで買ったものを、立ち食いするか、どこかベンチを探して食べるしかない。そこでも消毒が必要だし、外出時はマスクだけでなく、アルコールや除菌用ティッシュなどが手放せない。

それでも人通りの少ない住宅街や裏通りを歩いていると、時折、普通にテーブルで数名が食事をしている食堂や、屋台の前に置かれた椅子に腰掛けてタコスを頬張る人を見かける。商売をする側にとってみれば、その場で食べたい客に応じるのが、売り上げを確保するのに不可欠だという話だろう。

旧市街に近い露店街や衣料品店街、ソカロ(憲法広場)の周辺に出る露店では、食べ物、衣料、スニーカー、電化製品、スポーツ用品、なんでも販売が続いている。彼らは、1日店を休めば、子どもに食べさせるものすら買えなくなるからだ。

露店街に近い広場の片隅にある保育園の取材をしていた私と篠田(わがパートナー)は、その様子を観察しながら歩いていた。すると、急に正面から、道端で売っていた商品を包んだ風呂敷状のビニールを抱えて走ってくる人たちが。それを見た露店商も、慌てて店をたたみ、通り沿いに立つアパートの中へと消えていく。衣料品店も、シャッターを降ろし始める。しばらくして、警察が遠ざかったことを確認すると、また商品を持ち出しはじめた。

さらに進むと、こちらはのんびり商売が続いている。そこで、篠田がその風景をビデオで撮影し始めた。と、突然、トランシーバーを持った男がひとり、背後から駆け寄り、篠田の肩を掴んで「撮影はダメだ」と言いながら、顔を覗き込む。

「あ、ごめん!」。相手が外国人だと知った途端、丁寧に謝り去っていった。

男は、このあたりの露店で商売をする者たちのグループのメンバーで、警察の取り締まりが来たら、さっと店を撤収できるように知らせる連絡係だ。篠田を警察の手先だと勘違いしたのだろう。

コロナが来ようが、なにが来ようが、売らなきゃ食べられない都会の露店商たちは、あの手この手で抜け道を考え、商売を続ける。田舎と違って、食料だけは自分の畑で確保しよう、なんてことはできないからだ。

政府による休業補償も、役人や政党、地域を仕切る元締めにコネがないと、給付対象リストにすら、入ることができないという。コネがあっても、大抵は「お金(賄賂)」がかかる。

「だから、商売をやめるわけにはいかないのよ。病気に苦しむ前に、飢えに苦しむ羽目になるから」

露店商の子どもたちを預かる保育園を運営する友人は、そうため息をつく。


1 件のコメント:

  1. Gracias por tu visión y ser una vos en este país de injusticia y diferencia social

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