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2014年12月11日木曜日

若者たちの官邸前

特別秘密保護法が施行した昨日、官邸前には再び若者、元若者が1700人ほど集まった。私は知り合いの大学生が参加する「特別秘密保護法に反対する学生有志の会(SASPL)」がこの集まりを主催していると知り、出かけた。

開始時間の夕方6時に着くと、老若男女、様々な世代の人々の姿が夜の官邸前交差点に浮かんでいた。最初から、抗議行動用スペースと一般歩行者用スペース、車道が柵で分けられているのが、いつも気になる。ほかの国のデモや路上集会で、こんな光景はほとんどみたことがない。抗議行動の迫力を削ぐために、どっと集まれないようにしているとしか思えない。「ほかの人たち・車の邪魔にならないように」ということだが、邪魔になるくらいでないと、ひとはその切実さ、問題となっていることの深刻さを強く感じないものだ。

どのくらい人がいるのか確かめようと、うろちょろしていると、私の名を呼ぶ人がいる。一緒に本を作らせていただいたことがあり、私たち「ストリートチルドレンを考える会」の会員もである、絵本作家の浜田桂子さんだった。浜田さんら子どもに関わる仕事をされている作家たちも、この法律に抗議する運動をしている。行動する作家にそこで出会えたことで、元気が出た。

「若者たちが渋谷でデモした時も参加したのだけれど、リズムが違って、カッコいいのよね」と浜田さん。学生主導の集まりは、コールを上げるにもヒップホップのリズムとメロディーにのせて叫ぶから、歯切れが良い。なになにはんたぁ〜い、と叫ぶ中高年のそれとは確かに違う。

しばし叫ぶと、今度はスピーチの番が来る。最初に話した女子学生の言葉は、率直かつよく練られたもので、もっと大勢の若者に、おとなに伝えたいと思うと同時に、自分の学生時代の思いと重なるものがあり、共感を覚えた。

彼女は昨年も、官邸前で行われた大きな抗議集会に来たという。地下鉄に乗り、官邸前にたどり着くと、人の多さと熱気、叫びに圧倒され、自分には場違いではないかと感じて、結局その輪の中に入ることができなかった。そして地下鉄で帰路に着く。新宿まで行き、下車した彼女は周囲を見回した。と、そこにはこの世の中に何の問題もないかのように笑顔で通り過ぎる人々がいた。官邸前とここにいる人々のギャップ。それをみたとき涙が出たという。と、同時に、官邸前の場の雰囲気に圧倒され、一言も発せず意見を述べずに逃げてきた自分自身に腹が立ったとも。そして彼女は決意した。この国の民主主義と未来に関わることをきちんと自分で学び、考え、発言し、行動していこうと。

「無関心でいるうちに、市民が声を上げることができる可能性を奪われていく」、「忙しいことを理由に、勉強することから逃げていた。人々が戦い、勝ち取ってきた自由のもとに生かされていながら、自分では戦うことを放棄していた」、「平和は勝手に歩いてはこないんだ」---- 若者たちのスピーチには、多くのおとなが忘れている、たとえ気づいてはいても、自分の生活をややこしくしないために敢えて触れないようにしている真実が、たくさんちりばめられている。

私たちは彼らと同世代でも、もっと歳を取っていても、それに関係なく、ヒップホップでもラップでも演歌でもサンバでも、あらゆるリズムにのって、ともに声を上げるべき時にいる。上げるべき時に上げないと、70年前の戦争のようなことが起きる。福島の原発事故のようなことが起きる。それがわからない人は、鈍感なのか、想像力がなさすぎるのか、未来の人々に対する思いやりがなさすぎる自己中なのか、だ。

今年のノーベル平和賞を受賞したサティヤルティさんとマララさんのスピーチにも、世界の未来を思いやるメッセージが込められていた。私たちはそれを自分のものとし、行動で示さねばならない。
「知識を民主化し、正義を普遍化し、ともに思いやりを世界中に広げよう」
「空っぽの教室、失われた子ども時代、無駄にされた可能性を目にすることを"最後"にすることを決めた、"最初"の世代になりましょう」







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