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2014年6月10日火曜日

子どもの貧困が未来に落とす影

日本の子どもの6人に1人が貧困家庭に育っている。長い間、いや今でも恐らく大半の日本人は、この事実に対して、本気で危機感を抱いていないのではないか。だとすれば、それはこの子どもたちにとってはもちろん、社会の未来にとって、大問題だ。


メキシコでは、人口の45%強が貧困状態にあるといわれるが、少し前にユニセフとConsejo Nacional de Evaluación Política de Desarrollo(開発の政治的評価審議会)が出した報告書によると、18歳未満の子どもにおいては、53%強が貧困状態にあるという。つまり、おとなよりも子どもたちのほうが、貧困にさらされている度合いが高いということになる。この結果に対して、ユニセフの代表者は、「(半数を超える子どもたちが貧困状態に陥っていると言うことは)子どもたちは自分の可能性を十分にのばすことができる環境になく、私たちが平和で包容力のあるメキシコを実現するために必要としている子どもに、育つことができない」とコメントしている。

メキシコではここ何年もの間、麻薬マフィアによる組織犯罪と抗争が続き、8年間で8万人以上が殺されたと推測されている。殺し合いにリクルートされているのは、貧困層の若者たち。75000人前後が麻薬組織で働いていると言われる。ユニセフ代表者の言葉が示す、未来の危機がそこにある。

そんなメチャクチャな状況にありながらも、メキシコには相変わらず儲かっている(日本の金持ちなんかめじゃないホンマもんの)大金持ちがおり、人口の1%にも満たないその人々が、国の富の半分を手にしている。彼らの活躍のおかげで(!)、今後の経済見通しはそれなりによい。そして日本企業は今、北米・南米への輸出拠点として、メキシコにどんどん自動車工場をたてている。それが未来を担うべき子どもたちの暮らしを改善してくれるか? いや過去の経験からすれば、期待できない。
政府と企業を中心とする社会の権力者たちが、99.9999...%の市民と貧困に未来を奪われている子どもたちの権利の回復こそが国の最重要課題だと考えないかぎり、「平和で包容力のあるメキシコ」は実現しない。

そして日本においても、経済大国といわれながらも、なぜこれほど貧困に苦しめられる子どもがいるのか。メキシコ同様に経済成長は必ずしも皆に豊かさをもたらすわけではなく、多くの子どもたちにとってはむしろ逆の働きをしているという事実を、真剣に考えなければならない。

子どもの貧困は、格差の問題と深く関わっている。そして格差社会は(どこでも麻薬戦争を引き起こすわけではないとしても)、人の心を乱し、危うく不寛容な(包容力のない)世界をつくりだす。

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