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2021年1月8日金曜日

パンデミック下のメキシコで 2)施設の子どもたちを守る

呼び鈴を押す。しばらくして扉が開き、玄関先スペースに入ると、そこにはプールのシャワーのような機器が置かれている。 

「そのパイプの下に立って、横のボタンを押してください」

と、出迎えてくれた青年が促す。言われた通りにすると、頭の上から消毒液らしきものが降り注ぐ。そのあと、待合室に進むと、今度は手の消毒液と体温計、脈拍数&血中酸素量の測定機器が置かれている。全部クリアして、オフィスの中をのぞくと、そこにマリオと妻で心理士のメイリンが待っていた。

ここは、メキシコシティにおけるストリートチルドレン支援NGOの老舗的存在であるHogares Providenciaのオフィス兼教育、カウンセリング、乳幼児支援施設だ。今、そのプログラム全体のディレクターであるマリオとは、もう20年以上の付き合い。毎年、私たちが実施しているスタディツアーでは、彼らが運営する施設で暮らす元ストリートチルドレンの子どもたちを訪ね、土曜日には一緒にピクニックに行って、メキシコ対日本でサッカーの試合をするのが恒例となっている。

なかなかしっかりとした感染対策をとっているのね、と感心すると、マリオが、

「君たちは特別にこれでクリアとするけど、スタッフやボランティアは、さらに二階でシャワーを浴びて、持ってきた清潔な服に着替えてからでないと、子どもたちのところへは行けないんだよ」

まさに、「徹底的」。

そうやっているから、Hogares Providenciaの施設で暮らす1歳から19歳までの92人の子どもたちの中からは、まだ感染者が一人も出ていない。メキシコシティ政府と保健省の支援で、これまでに2回、全員のPCR検査も実施した。

「予防策を徹底するために、最初は外部からのボランティアの受け入れも停止していたんだ。でも、それが長く続くと、子どもたちはコロナで病気にならなくても、心の病になることが明らかだった。だから、こうした対策をとりながら、人を受け入れているんだ。人と触れ合うことは、子どもの成長にとって大切だからね」

と、マリオ。メイリンが、

「心理カウンセリングも、オンラインはあり得ないので、対面でやっているわ」

と付け加える。

私たちは、仲間とボランティアで運営する「ストリートチルドレンを考える会」からの寄付を手渡し、クリスマスの夜に日本の仲間たちと施設をzoomでつないでオンライン交流会をする計画を話し合った。WiFi環境がいい女子定住ホームに20人ほどを集めて実施することに。当日は、開始1時間前に、この事務所で落ち合うことにする。

「何時に来てもらってもいいよ。僕たちはここに住んでいるから」

 マリオがそう微笑む。「えっ、(メキシコシティに隣接する)メキシコ州に住んでいるんじゃなかったの?」と目を丸くする私に、彼らは一言、

「ここにいる方が、通勤の必要もないし、安心だからね」

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